バルセロナではガウディの建築を見るというのが一番の目的だったのだが、限られた時間のわりに充実のガウディ巡りだったのではないかと思う。今回見ることが出来たのは、カサ・バトリョ、カサ・ミラ、サグラダ・ファミリア、グエル公園。全部世界遺産に登録されている。それぞれの建物については他に詳しい解説がネットにあちこちあると思うので、参考にしていただきたい。まずはバトリョ邸から。

左はバトリョ邸の屋根裏から屋上へ上る螺旋階段。まるで巻き貝の中にいるようで、ここを上っていくと変わった形の煙突がにょきにょき立っている屋上に出られる。屋上には貯水槽が置かれていたドームなどもあり中に入れるようになっていた。バトリョ邸の内部は海がモチーフになっていて、至る所で海を連想させるような造形を見ることが出来る。

右の写真は最上階のどこかから明かりとりの吹き抜け部分を見たところで、はめられているガラスが波のようで美しい。それこそ水の中にいるようだ。青い部分は10センチ角くらいのタイルで、地上に近づくにつれ色が薄くなっている。これは上層と下層で明るさの印象をなるべく均一にするための工夫らしい。

左の写真が1階から吹き抜けを見上げたところ。ここも、海の底から海面を見上げているようだ。この写真だとタイルの色が変わっているのがわかりにくいが、もしみんな同じ色のタイルだったら最上階の方がもっと明るく写ったのかもしれない。他にもこの写真で分かるように、吹き抜けに面した窓の大きさを、下層に行くに従って大きくするなど、なるべくどの階にも自然光をまんべんなく取り入れるための工夫がされている。どの階にも自然の明かりを取り入れるというだけなら凡人でも考えるところだろうが、どの階にも同じくらいの光量を、と、考えたところがガウディのすごいところ。

さてカサ・バトリョを後にして5分ほど歩くと大通りを挟んで反対側にカサ・ミラが見えてくる。想像していたよりも大分大きくて、すごい迫力だ。現在ももちろん普通に利用されているが、住居部分一番上のフロアと、屋根裏、屋上が見学出来るようになっている。部屋ごとに古い家具が配置されていて、どんな風に部屋を使っていたのかがよく分かる。屋根裏はガウディに関する博物館になっていて、カサ・ミラの模型や、ガウディの造形の由来が分かるような展示などがある。屋上は起伏があって、こちらも人の顔を連想するような奇妙な形の煙突がたくさん立っている。小さい頃に何かでこの煙突群の写真を見て、怖かったけど目が離せなかったような記憶がある。

昼ご飯を食べた後サグラダ・ファミリアの方角へのんびり歩いていると、街路樹の向こうに突然塔が見えてくる。周りはいたって普通の町並みなのでかなり異質な感じがするが、サグラダファミリアがあまりにも存在感があるために周りの景色は殆ど印象に残っていない。(
Googleのストリートビューで周りの雰囲気を見ることが出来ます) 近づいてからまず外周をぐるっと回ってみた。

工事のフェンスや覆いの隙間から鉄筋コンクリートむき出しの柱や外壁が見える部分もある。装飾が施されていないとふつうの建築現場と何ら変わらない。鉄筋コンクリートが発明されたのはちょうどこの建物の建設が始まった頃らしいのだが、その頃からこの建物にも鉄筋コンクリートが使われていたのかどうかは分からない。

一通り外側を見た後チケットを買って中へ。まずその天井の高い空間に圧倒される。ヨーロッパに来たのが初めてで、いわゆる教会建築というのも初めてだったのでなおさらだったと思う。中には巨大な柱がたくさんあって、それぞれが上の方で枝分かれしており天井を支えている。まるで大木が立ち並ぶ森の中へ入ってきたような気分になる。この美しい柱は単純な図形の組み合わせを少しずつずらしたり、重ねたりすることによりこのように複雑な形状になっていく。何となくこういう形になっているのではなくて、すべて幾何学的な根拠のあるデザインだ。
内部は見学者用の通路やフェンスが設けられているとはいえ、完全に工事現場で、フェンスの中には資材が積んであったり、柱の一部分とおぼしき模型が置いてあったりする。(ガウディは図面ではなく模型を作って建物の構造を検証した。スペイン内戦で殆どの模型はがれきになってしまったそうだが、弟子たちが復元作業を行い、それを元に工事が進められている)実際に工事中で、ドリルやなんかの音がずっとしている。こんなに見学者が多い工事現場もないだろうなぁ。塔に上ることも出来るのだが、エレベーター待ちの行列がすごかった。1時間はかかるとのことなので、ちょっと残念だがパス。教会の中を一通り見た後いったん外に出ると今度は地下に資料室があり、完成予想図や、模型が展示されている。模型の復元なども行われていた。完成予想図を見ると、今完成している塔よりひときわ高い塔が真ん中にどかーんと建つことになっているのだが、自分が生きている間に目にすることが出来るだろうか。ちなみにガウディ自身は今建っている8本の塔のうちの1本が完成した1週間後くらいに市電にはねられて亡くなったそうである。
立ち去るのが名残惜しかったが、もう1カ所みたい所がある。さすがに少し歩き疲れてきたのでタクシーでグエル公園へ移動。

写真は公園入り口の様子。中央の階段の間には噴水があり、有名なモザイクタイルのトカゲちゃんがいて観光客の記念撮影ににこやかに応じていた。そういえば公園の門のすぐ外に、そのトカゲちゃんをまねたかぶり物を着た人が記念撮影いかがですかーと営業していた。

ここは元々自然に囲まれた分譲住宅地として建設されたのだが、工業化が急速に進む時代にあって、当時の人々にはその発想は理解されなかったそうで、60軒計画されたうち購入したのは施主のグエル伯爵とガウディだけだったという。こんな場所で暮らせたらさぞかし気持ちいいだろうにもったいない、とは今の時代だから思うことだろうか。有名な波形のベンチからの眺めは最高で、サグラダファミリアも見えた。右の写真はベンチから公園入り口を見下ろしたところ。ベンチのモザイクタイルは、廃品の陶器を砕いた物が使われている。
ベンチで縁取られている広場の両側には遊歩道が伸びていて、その下はそれを支えるアーチ状の柱が並んでいる。この場所の写真もよく目にするが、一つ一つの柱は石の積み方やねじれ方が微妙に違っていたりして、見ていて飽きない。凹みには鳩の巣があった。
今回のガウディ巡りはこれでおしまい。帰りは住宅街の中ぶらぶら坂道を下って、最寄りの地下鉄駅から地下鉄に乗ってホテルへ戻った。翌日は夜行列車でグラナダへ向かうのだが、それまで結構時間があったので旧市街を歩いてカテドラルを見学し、ピカソ美術館にも行ってきた。こちらもかなりおもしろかったのだが、今回はこの辺で。